【コラム003】人手不足に順応する旅館
人手不足に順応する旅館
労働人口が激減している日本において、どの業種も労働者確保のための施策を必死に行っている。
当然、旅館業も労働者確保に苦労している。実感している方が多いと思うが、
帝国データバンクが2023年1月に発表した調査結果によると、ホテル・旅館業界の人手不足の状況は以下の通り。
- 正社員が不足していると感じている企業の割合は77.8%
- 非正規社員が不足していると感じている企業の割合は81.1%
これらの数値は、全業種の中でトップとなっている。
国内労働人口が減り続ける以上は、この数値は改善される事はなく、さらに悪化する。
前置きが長くなったが、とある温泉旅館で、この「労働者不足対策」で、驚きの事例をみてきた。
山奥にある80部屋くらいの中規模旅館A。かなり老朽化した宿。避暑地としても有名な温泉地だが、周辺の多くの宿が「運営会社変更」していたり、「廃業・廃墟化」となっている。
私が宿泊したA旅館も、3回も運営会社が変わっていた。
このA旅館では、なんと「素泊まり」もしくは「冷凍弁当付き宿泊プラン」のみ。料理人や接待係などは居ない。庭の見える大きなロビーラウンジがあり、以前は喫茶コーナーだったと想像される。しかし、このスペースは、「電子レンジコーナー」や「無料セルフコーヒー」や「無料卓球台」となっている。冷凍弁当は、この電子レンジでセルフ解凍する。
とにかく「人的サービス」を徹底的に削減した形だ。その代わりに宿泊料金は安いビジネスホテル並みに抑えている。
賛否あるとは思うが、これも立派な「労働者不足対策」だ。
田舎の老朽化ホテルで人員を確保する苦労は並大抵ではない。「人が確保出来ないなら、どうするか?」と思考を大転回した解答のひとつが、この戦術なのだろう。